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Reports.web TypeScript/Node.js WASM言語ラッパー プログラマーズガイド/APIリファレンス

Reports.webのWASM言語ラッパーは、TypeScript/Node.jsの業務データから、共通の印刷データPREPEJを組み立てるための小さなライブラリです。帳票の座標計算やPDF描画を各言語へ重複実装せず、ブラウザまたはサーバーの共通WASM帳票エンジンへ任せます。

この一冊では、初めて利用する方が次のプログラムを作れるようになることを目標にしています。

WASM言語ラッパーの全体構成

1. 最初に知っておくことRM001

1.1 「WASM言語ラッパー」とはRM002

本書では、各言語でPREPEJを組み立てる補助ライブラリをWASM言語ラッパーと呼びます。実装の中心はPrintDataです。ラッパー自身はWASMを直接ロードせず、SVGやPDFも描きません。出力形式を共通JSONに揃えることで、業務処理と描画エンジンを疎結合にします。

これはPure Java/Pure Python/WPF・.NETの言語別エンジンとは異なる方式です。Pure系は各言語の帳票エンジンを直接呼びます。WASM方式は7言語が同じWASMエンジンとブラウザUIを共有します。

1.2 帳票ができるまでRM003

  1. デザイナーで帳票定義 .prepdj を作ります。
  2. TypeScript/Node.jsのPrintDataへPREPDJを設定します。
  3. DBやAPIから取得した値を、デザイン上のオブジェクト名へ設定します。
  4. 1ページずつ確定し、.prepejを作ります。
  5. PREPEJをブラウザのプレビュアー、またはサーバーWASMへ渡します。
  6. 共通エンジンがSVGプレビュー、PDF、印刷を担当します。

1.3 二つのファイルRM004

拡張子 呼び名 役割
.prepdj 帳票定義 用紙、文字、罫線、画像、バーコード、繰返しなどのデザイン
.prepej 印刷データ(Print Document) 帳票定義とページごとの値・属性をまとめた、再表示・再印刷可能な文書

PREPEJは単なる一時レスポンスではありません。ファイル保存、再読込、メール添付、REST API、サーバー間転送、後日の再印刷に同じ文書を使えます。

2. サンプルを動かすRM005

基準環境は Node.js 22+ です。リポジトリ内の実装とサンプルを同じ版で使ってください。

cd C:\Pao\Pao.Reports.Web\samples\node
npm ci
npm run build
npm start

ブラウザで http://127.0.0.1:8092/demo/reports.web/samples/node/ を開きます。

収録サンプルでは、単純帳票、10の倍数、郵便番号一覧、見積書、請求書、商品一覧、名刺、デザイン機能見本を確認できます。最初は請求書を開き、ブラウザ生成とサーバー生成のPDFが同じページになることを確かめてください。

3. 最初の一枚を作るRM006

import { readFile } from "node:fs/promises";
import { PrintData } from "./PrintData.js";

const definition = JSON.parse(await readFile("invoice.prepdj", "utf8"));
const print = new PrintData()
  .setDefinition(definition)
  .pageStart()
  .setValue("請求番号", "INV-2026-001")
  .setValue("お客様名", "パオ商事株式会社")
  .pageEnd();

response.writeHead(200, { "Content-Type": "application/json; charset=utf-8" });
response.end(print.toJson());

呼出順は 定義を設定 → ページを開始 → 値を設定 → ページを確定 → JSONを取得 です。未完了のページがある状態ではPREPEJを取得できません。この制約により、途中までの帳票を誤って配信することを防ぎます。

4. PrintData APIリファレンスRM007

実装ファイルは samples/node/src/PrintData.ts です。次のAPI名は実装に合わせています。

API 用途
setDefinition 帳票定義(PREPDJ)を設定します。設定値は複製され、呼び出し元の変更から守られます。
pageStart 新しい印刷ページを開始します。別の定義を渡すと、表紙から明細などへ様式を切り替えられます。
setValue 名前で指定した動的オブジェクトへ値を設定します。indexは0から始まる繰返し位置です。
setRepeatedValue 縦横二方向に繰り返すオブジェクトへ、X・Y位置を指定して値を設定します。
setTypedValue DynamicText、DynamicImage、DynamicBarcodeなど、値の種類を明示して設定します。
setImage 画像URLまたはdata URIを動的画像へ設定します。
setBarcode バーコード/二次元コードへ渡す文字列を設定します。
changeAttributes 位置、幅、色、フォント、配置などをページ単位で動的に変更します。
changeRepeatedAttributes 繰返し位置を含めて動的属性を変更します。
pageEnd 現在のページを確定し、印刷データへ追加します。
toObject / toJson 完成したPREPEJをオブジェクトまたはJSON文字列として取得します。
save 完成したPREPEJを一時ファイル経由で安全に保存します。

4.1 値とインデックスRM008

値には文字列、数値、真偽値、nullの単純値を渡します。配列や任意オブジェクトを値として渡さず、帳票オブジェクトごとに明示的に対応付けてください。繰返しのindex、indexX、indexYは0から始まり、負数はエラーです。

drawing=falseは、その繰返し位置を描画しない場合に使います。同じ名前・同じ位置への設定はサンプルの規約に従い、意図しない重複を作らないようにします。

4.2 ページごとに定義を切り替えるRM009

表紙と本文、途中から異なる一覧形式などでは、ページ開始時に別のPREPDJを渡します。座標をプログラムへ直接書くのではなく、デザイナーで完成させた定義をページへ結び付けます。定義を変更する前に現在のページを必ず確定してください。

5. 明細と改ページRM010

const print = new PrintData().setDefinition(definition);
for (let offset = 0, page = 1; offset < details.length; offset += 20, page++) {
  print.pageStart().setValue("ページ", page);
  details.slice(offset, offset + 20).forEach((d, row) =>
    print.setValue("品番", d.code, row)
         .setValue("品名", d.name, row)
         .setValue("金額", d.amount, row));
  print.pageEnd();
}

1ページの行数は帳票定義と業務仕様から決めます。最終ページの空行を描画するか、明細ごとに罫線を出すかもプログラム側で明示します。ページ番号はPREPEJのページ順と、帳票へ表示する業務上のページ番号を分けて考えます。

6. 画像・バーコード・動的属性RM011

print.setImage("角印", stampDataUri)
  .setBarcode("商品QR", "https://example.jp/items/123")
  .changeAttributes("合計金額", {
    bold: true, fontSize: 16, horizontalAlignment: "Right"
  });

画像は閲覧先でも取得できる管理下のURL、または許容サイズのdata URIにします。サーバーPDF生成では、任意の外部URLをそのまま取得するとSSRFにつながります。固定画像は許可リストまたはアプリ管理下のファイルから解決してください。

動的属性では、名前・型・値を無検証のリクエストから直接渡さないでください。変更できる属性をアプリ側で限定し、数値範囲、色、配置、フォント名を検証します。

7. ブラウザへ渡して表示するRM012

TypeScript/Node.js APIはPREPEJをapplication/json; charset=utf-8で返します。ブラウザ側は共通のReports Web APIへ渡します。

<iframe id="reportsViewer" src="/reports-web/previewer.html"></iframe>
<script>
const viewer = document.querySelector('#reportsViewer');
viewer.addEventListener('load', async () => {
  const response = await fetch('/api/invoices/123/print-data');
  if (!response.ok) throw new Error(`HTTP ${response.status}`);
  await viewer.contentWindow.ReportsWeb.setPrintData(await response.json());
});
</script>

親画面とプレビュアーは同一オリジンに置くのが最も簡単です。別オリジンでpostMessageを使う場合は、送信元と送信先のoriginを固定し、*を本番環境で使わないでください。

プレビュアー側ではsetZoom("auto")、ページ移動、検索、印刷、exportPdf()savePrintData()を利用できます。独自画面へ表示面だけを組み込む場合はhideAll()でツール群を隠し、同じ機能を外側のボタンから呼び出します。

8. PDFを作る二つの場所RM013

8.1 ブラウザで作るRM014

PREPEJを利用者のブラウザへ渡し、ブラウザ内のWASMがPDFを生成します。サーバーのPDF描画負荷を抑え、プレビューからそのまま保存・印刷する操作に向きます。機密データをブラウザへ渡してよいかは、業務の認可設計で判断します。

8.2 サーバーで作るRM015

Node.jsから同一プロセスまたは共通Node/WASMサービスへPREPEJを渡します。 定期処理、メール添付、保存、監査、画面を開かない帳票生成に向きます。

POST /render/pdf
Content-Type: application/json

<PREPEJ JSON>

成功時はapplication/pdfを返します。入力・出力サイズ、同時実行数、処理時間を制限し、失敗時の途中PDFを保存・配信しないでください。ブラウザ生成とサーバー生成は同じPREPEJを入力にするため、業務データ組立てを二重実装する必要はありません。

9. PREPEJを保存・再利用するRM016

saveは完成したPREPEJをUTF-8 JSONとして保存します。保存前にページをすべて確定してください。ファイル名には.prepejを使い、アップロード時には拡張子だけで信用せず、Format、Version、Definition、Pages、サイズ、ページ数を検証します。

保存した文書は、Webプレビュアーの「開く」またはドラッグ&ドロップで再表示できます。HTTPで受け渡す場合もファイルと同じJSONです。再印刷の証跡として保管する場合は、業務データの保持期間、暗号化、アクセス権、削除規則を定めます。

10. Web APIとデータベースRM017

DB列と帳票オブジェクト名はコードで明示的に対応付けます。SQLはプレースホルダーを使い、利用者が参照できる伝票かを取得前に確認します。日付、通貨、端数処理は帳票へ渡す前に業務規則で確定します。

機密帳票のレスポンスにはCache-Control: no-storeを設定します。内部例外、接続文字列、ファイルパスを利用者へ返さず、要求IDを安全なサーバーログへ残します。帳票定義や画像は可能なら公開ルート外へ置きます。

11. テストとリリース確認RM018

ラッパー単体の基準コマンドは npm test です。

最低限、次を確認します。

ラッパー変更時はWASM描画エンジン全体を毎回再試験するのではなく、生成PREPEJが共通仕様と基準サンプルに一致することを中心に確認します。WASM、プレビュアー、フォント、画像処理を変更した場合は、別途描画回帰試験が必要です。

12. よくある問題RM019

症状 確認すること
帳票が空になる PREPDJ上のオブジェクト名とsetValueの名前、indexを確認します。
2ページ目がない ページごとにpage start/page endが対になっているか確認します。
画像が×になる URLの到達性、data URI、CORS、サーバー側許可リストを確認します。
日本語が欠ける 配置したフォント、フォントマップ、WASMとWeb資源の版を確認します。
WASMが読み込めない .wasmのURL、application/wasm、キャッシュ、同一リリースのJSを確認します。
PDFだけ失敗する 入力サイズ、画像サイズ、タイムアウト、同時実行制限、サーバーログの要求IDを確認します。

13. 配置・更新・ライセンスRM020

ラッパー、プレビュアー、JavaScript/TypeScript、CSS、WASMは同じReports.web配布版から取り出してください。HTMLだけ、またはラッパーだけを別バージョンへ差し替えると、PREPEJや公開APIの互換性を判断できなくなります。

試用版と製品版ではWASMが異なります。購入者用WASMを公開サンプルやソース管理へ混入させないでください。正式な動作環境、使用許諾、更新履歴、問い合わせ先は共通製品マニュアルを正本とします。開発ライセンスは開発用PC 1台につき1ライセンスです。